介護福祉報告 No19〜20


  件名:介護福祉受講報告-No19       送信日:2000/04/21 (金)

  痴呆の高齢者の六回目です
  前回まで「接し方」を色々見てきましたが
  
  今回は  「観察と評価」 についてお知らせします
  高齢者の方は色んな状況のため自分から細かな
  説明をされない事が多いものです
  他の現象を痴呆に結び付けてしまい易いので特に注意が必要です
  
  ☆例えば  「指示したことを守らなかった」 とします
  
   介護者側は 「指示内容を理解出来ない」 →
           「痴呆と判断し痴呆扱いする」→
           「指示や注意を伝えない」
  
   本人は  「耳が聞こえづらくなった」→
         「聞き返すことをしなかった」→
         「情報を伝えてもらえない」→
         「不安、孤独、猜疑心が増す」→
         「情緒不安定、痴呆可」  になって行きます
  
  ☆痴呆と誤認しやすい状況と発現例を示しますと
  ・入院当初の混乱、不適応
     ・・・・環境への不慣れからの間違いや混乱、一時的な不適応
  ・術後 全身状態の悪化時の譫妄、意識障害
     ・・・・混乱、幻覚、精神運動興奮
        《譫妄(せんもう)ではとりとめのない事を言ったり幻覚が
        出たりしますが、原因を追求して治療すればよくなります》
  ・コミュニケーション障害(失語、難聴)
     ・・・・聞き取れない、理解できない、言葉が適切でないことから
        起る間違いや混乱
  ・失認、失行
     ・・・・着衣などの行動が出来ない
  ・日常生活動作(ADL)の低下
     ・・・・筋力低下などで動作が中々出来ないことからくる
        自発性の低下
  ・情緒不安定、性格、抑うつ状態
     ・・・・おかしな要求、攻撃的言動、自発性低下による不能力
  
   ー身体面での評価ー
  
  ☆高齢になってくると、一人で幾つもの病気を持っていることがあり
   症状も典型的な現れ方をしなくなってきます
   そのため気づいた時は、かなり症状が悪化していたり、
   転んで時は少しも痛がらなかったのに、
   何日か後にレントゲンで骨折が発見されたり、
   肺炎でも熱が出なかったりすることがあります
   
  ☆特に痴呆のお年寄りは適切な訴えが出来ないため
   継続的に充分な観察と評価が必要です
   (何時も徘徊する人がじっと座っていたり、食事をしなかったり・・・)
  
    −感情面での評価ー
  
  ☆痴呆がかなり高度になっても感情は保たれているそうです
   むしろ非常に敏感になっているため、私達の些細な言葉や
   仕草でも非常に傷ついて「死んでしまいたい」とか、
   うつ状態になる方がいるそうです
   特に脳血管性痴呆の方は、感情の起伏が激しい方や、
   感情失禁になる場合もあるそうです
  
    −行動面での評価ー
  
  ☆日常生活動作(ADL)については何が出来て何が出来ないか
    こまやかに評価する必要があります
  
   例えば
   ・食事はどのように準備して、どの様な状態ならば
    自分で食べることができるか
   ・排泄はトイレの場所を教えるだけで、他の排泄行動はできるか
    それとも一つ一つの動作を分割して誘導する必要があるか
   ・食堂へ歩いていくことができるのに「ご飯ですよ」といっても
    食堂に来ることが出来ないのは 見当識障害ですから
    食堂の場所を教えてあげることが必要です
  
   これらで言えることは、「過剰な手出しは絶対しない」ということです 


  件名:介護福祉報告ー20        送信日:2000/05/08 (月)

  飛び飛びになりましたが
  今日は痴呆高齢者の七回目です
  
  前回、高齢者の言動や心身の状況から痴呆と結びつけやすい
  ものを中心にどんな状態のときにどんな誤解に陥りやすいか、
  それを防ぐための観察・評価は
  どの様に行えばよいかをお話ししました
  
  今回はいわゆる「問題行動」といわれるものと、その時の精神状態は
  どうなのか、そんな時どんな対応をすればよいかを書いてみます
  
    ー問題行動と精神状態への対応ー
  
  (そもそも「問題行動」というのは介護側の認識であって、
  本人には全てちゃんとした理由があるんですが・・・・)
  今朝も、親父を散歩に誘ったところ、さっさと出て行こうとするので
  訳を訊ねて見ると、「新聞配達に行く!」というんです!
  良く聞いて見ると、ふと中学生の頃、
  新聞配達のアルバイトをしていた時の
  朝の状況を思い出したらしく何だか懐かしそうにしておりました・・・
  
  ☆徘徊、迷子
    介護に関っている方から、異口同音に言われるのが
    「元気な痴呆の方が一番大変です!!」という言葉です
    だからといって、
    私は親父に寝たきりになって欲しいとは思いませんが・・・
  
   △状況を分析して見ると
    ・なれない場所で迷子になった
    ・特定の場所(自宅、実家、前住んでいた所・・)へ行きたがる
    ・突然、出ていってしまう   等があります
  
   △具体的な対処法(外に出ないための工夫には・・)
    ・声をかけて、他の事に関心を向け、外出を思いとどまらせる
     (例えば、お茶やお菓子に誘う、その人の好みのもので誘う、
      しばらくして一緒に出かけて見る・・・など)
    ・外出を思いとどまらせるような文面の張り紙をする
    ・センサーや皆の注意で出て行くのを察知する方法を講じる
    ・時間を決めて散歩などで満足させる
    ・行きたがるところへ、折りを見て連れて行き満足させる  
     等が考えられます
  
   △不穏・興奮などから落ち着きをなくし、
     動き回ったり外に出たりすることがあります
     こんな時は
    ・声をかけて途中で休憩を促したり
    ・どうしても外に出るときは、
     ついて歩いたり、近所に協力要請する事が必要です
  
   探し出す工夫としては
    ・迷子札を用意しておいたり
    ・普段の言動から行き場所の見当をつけたり
    ・今流行りの探索装置をつけたりしなければならないでしょう
  
  ☆被害妄想
    これもよくある行動ですが、すぐ他人を疑うことから、
    色んなトラブルが発生しやすいものです
   
   状況として
   ・財布や宝石、通帳などをしまい忘れて看護婦や、
    その場に居合わせた人を疑ってしまいがちです
  
   こんな時は
   ・自分が疑われても興奮しないことが肝要です・・(難しい!!)
   そして
   ・自分の気持ちを落ち着かせて、
    なくした本人が困っているのだと受け止めることが大切です
  
   解決策は
    ・一緒に探すことを納得してもらい、共に行動を起すことです
     (本人に探してもらうことがコツです・・・)
    ・探してもないことがわかっている場合や、毎回時間をかけるのが
     大変な場合、別の代替品を用意しておき、
     それを与えて納得してもらうことです
    ・通帳などなくなったら困るものは、
     あらかじめ本人が信用している人に預けておくのもよい方法です
  
  ☆譫妄(せんもう)・・意識障害で、特に外界に対する意識が低下し、
   錯覚・妄想など &不穏  が現れる
   
   症状としては
    ・不眠、浅い眠り、昼夜の逆転、夜中を昼と勘違いする、
     混乱、大声、幻覚・見当識がずれる、夜中の色んな活動、
     点滴チューブの抜去など
   これには
    ・もに静かに対応することが重要です! 
     特に命令口調は避けなければなりません
    ・手を握ったりして落ち着かせることも効果的です
    ・夜中の活動には、今の時間を教え、もう一度寝かせることや
    ・温かい飲み物や軽食を用意して勧めたり
    ・人形、ぬいぐるみで安心させたり
     (これは私には良くわかりません・・)
    ・そばにいて安心させることも効果的です
    ・また、廻りの環境を鎮めることも効果的なようです
    ・「眠りなさい」ではなく、「眠れないんですか?」と
     声をかけて理解して上げることも重要です
  
   予防的対策としては
    ・日中を活動的にすることや
    ・入眠のための工夫をすることが良いでしょう
  
   その後の対応としては
    ・落ち着かない原因を(身体的異常、薬物による異常など)
     探ったり
    ・身体状態をチェックしたり
    ・場合によっては使用薬物の副作用チェックや
     医師との治療方針の確認相談も必要かも知れません
  
  あと、幻覚、家に帰りたがる、失禁・不潔行為、過食・異食
  及び家族の介護のポイントについては次回お話します


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